透明な壁のむこうに 澤本玲子写真集
「見知らぬ街で」「イリュージョン」「鏡の宇宙」「見えないものたち」と題し、ミステリアスな写真を中心に、詩を配した三冊目の写真集。先に刊行した「絵本のように」「浮遊する記憶にのせて」と同じように、写真表現の多様さと、繊細な色彩、画面の構成力、リズム感の心地よさが特徴だ。テーマの透明な壁ガラスの場合、挟んだ内と外の明るさの違いから、映像は、透けたりダブったりして、幻想曲を奏でたり、一瞬はっと虚を突かれたりする。
鏡を使用した作品は、実像と虚像とが織りなす白昼夢の展開だ。布への影絵や、木漏れ日のなかで、影は大気の揺れをイメージさせる。こうした“壁”を、日常生活の中で意識することによって、無意識の景色が語りかけ、人の想像力を駆り立てる。これら一枚、一枚の写真が、人生経験によってそれぞれ見え方が違う、ファジーさを演出している。
書籍名 | 透明な壁のむこうに 澤本玲子写真集 |
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著者名 | 芸術学部教授 澤本玲子・著 |
月号 | 2003年秋季号 No.97 |
価格 | 2,800円(税別) |
出版社情報 | 東京都品川区大崎1-15-9、三村印刷 |